【史跡訪問】栃木県那須郡那須町：殺生石と那須湯本温泉鹿の湯

那須温泉神社の境内から歩くと、『殺生石』がありました。

殺生石園地駐車場が入口になりますが、那須温泉神社を参拝した後、
殺生石に向かいました。

令和四年(2022年)に殺生石が二つに割れていることが確認されました。
数年前からひびが確認されており、自然に割れた可能性が高いと考えられます。

九尾の狐は鳥羽天皇が寵愛した女性「玉藻前」に化け、帝を惑わしましたが、
陰陽師の安倍泰成に正体を見破られ、那須野が原に逃げこみました。
朝廷は九尾の狐を退治することを上総広常と三浦義純に命じ、
狐を退治すると、姿を石に変え、その怨念は毒気となり、
近づく人や動物の命を奪う殺生石(せっしょうせき)となりました。

関連記事【訪問寺社まとめ】鎌倉時代：鎌倉殿や源氏一族・御家人ゆかりの寺社のご朱印

2024.09.11

付近一帯は硫化水素、亜硝酸ガスなどの有毒な火山ガスが絶えず噴出しており、
鳥獣が命を落とす事例が古来より知られていました。
人間ならば近づかなければ問題は無いが、小さな子どもやペットは注意が必要だそうです。

令和四年(2022年)十二月には、
殺生石近くにイノシシ八頭(成獣三頭・幼獣五頭)の死骸が見つかりました。

元禄二年(1689年)に松尾芭蕉は『奥の細道』にこの地を訪れていることを記しています。

殺生石からは遊歩道になっています。付近は硫黄の香りが漂っていました。

教伝地獄は、享保五年(1720年)に教伝という僧を供養した地蔵が建立されました。
親不孝の戒めとして、参拝する者が後を絶たなかったといいます。

現在の地蔵は昭和五十七年に建立されました。

昔、五左衛門という男が盲目の大蛇と出会い、厳しい冬を越せないのを気の毒に思い、
ススキと小枝で小屋を作ってあげました。
翌春、小屋を訪れると蛇の姿はなく、輝く湯の花がありました。

湯の花の作り方は村中に広まり、人々は蛇への感謝の意を込めて、
蛇の首に似たこの石を『盲蛇石』と名付け、大切にしました。

『湯の花』は地表から吹き出たガスの硫黄成分が結晶したものです。
水に溶けやすいため屋根を掛け、
地表に敷きつめた赤土の上にできた湯の花を採取しました。

江戸時代にはこの地域では年貢米の代わりに湯の花を納めていたことから、
貴重な資源であったことがうかがえます。

入口に殺生石園地駐車場があります。

殺生石から那須街道を渡ってすぐの場所に那須温泉鹿の湯があります。

鹿の湯は源泉掛け流しの日帰り温泉で、41度から最高48度(男湯のみ)の浴槽があります。
大人500円(令和六年現在)で入浴できます。

建物は昭和十六年に改築されました。
土曜日の朝9時頃に訪れましたが、たくさんの入浴客で賑わっていました。

聖武天皇の御世である天平十年(738年)に正倉院文書のなかに、
那須温泉の記録が残されています。

鹿の湯の建物のそばにある湯川の上流には湯本温泉源があります。

周辺は硫黄の香りがツーンと鼻孔をくすぐります。

戦前までは、湯治客が各旅館から「鹿の湯」に毎日通って入浴していました。
その近道を私財を投じて、困難な崖地を切り開いて道を作り、湯治客の便を図りました。
その人の名をとり『お初新道』と呼ばれています。

お初新道を下りると、湯の素採取場があります。三ヶ月に一度硫黄が採取され、
湯の素小屋にて乾燥させたものが、鹿の湯の窓口で販売されています。